空売りファンドの謀略
この物語はフィクションであり、実在の人物や団体には関係ありません。
ここにひとつの空売りファンドが存在します。
名を練達ファンド(RE・FUND)としておきます。
このファンドの戦略会議が行われています。
CEO
今年の戦略会議を行う。
空売りのターゲットをどこにするか、忌憚のない意見を聞きたい。
役員A
やはり、昨年に引き続きJ国市場が最適かと思われます。
役員B
しかし、J国市場は昨年の下げで、かなり割安感が出ています。
役員A
確かにそのとおりですが、割安のみで株価形成がされないのは
周知の事実です。
役員B
確かにそうです。
割高な株のほうが上昇局面では上がるが、半面下落局面では大きく
下がります。
しかし、割安なJ国株が上がりだしたら短期に大幅上昇し、 われわれの被害は拡大するのではないでしょうか?
役員C
私もB君の意見に賛成です。
J国株をここから空売りするのはリスクが大きすぎるでしょう。
役員A
お二方とも何を恐れているのですか?
J国市場にはもはや恐れるべき買い手はいないのはご存知でしょう。
役員B
それはそうだが、私なら景気後退懸念のあるA国市場を推します。
役員C
私はバブル化しているC国市場を推します。
役員A
まず、C国市場ですが、株式投資がブームになっており、C国国民自身の
資金が大量に流れ込んでおり、その国民の数の多さは世界一で、これから
の資金流入がさらに活発化すること、国自身がファンドを立ち上げその
資金量を考えれば、それらがもしわれわれの売りに買い向かってきた
場合非常な恐怖になりえます。
したがって今現在C国市場に空売りを かけるのはリスクが大きすぎます。
役員B
やはりA国市場で決まりでしょう。
役員A
ちょっと待ってくださいBさん。
今年は大統領選を控え、両党とも株の下落を食い止めたいという共通認識
を持っています。しかも中央銀行が利下げの意思と手段を持っています。
世界最大の実力を持ち、更に他国との協調行動を取りえることを考えれば A国株式への空売りは相応のリスクがあります。
更に巨額資金を所有する 長期投資家の存在を考えればかなり難しい勝負になります。
CEO
まとまらんな〜 分散で三国ともに売りを出すか。
世界同時株安もまた良しだ。
役員A
待ってください、CEO。
確かにいいお考えですが、効率の最大化、リスクの最小化の観点から
考えればJ国1点勝負が最善なのは昨年で証明済みです。
役員B
そうは言ってもA君、1点集中はリスクも大きいですよ。
役員C
昨年は昨年、いつまでも同じ方法でいいというのは。
役員A
確かに世界中の投資家が同じ判断、同じ価値基準で動いているならば
割安なJ国株を空売りするのは危険です。
しかし、J国国民の大半は株式投資に興味を持っていない事実があります。
これはA国、C国には見られない現象です。
したがって株価が下落しても豊富な資金が買ってくることはありえません。 更に株式投資を行っている資金の多くが短期資金です。
経済成長率が低いためA国やC国の投資のようなBUY&HOLDの長期資金は ほとんどありません。
更にわれわれにとって都合のいいことにJ国の短期資金はすぐに 損ぎりをしてくれます。 もちろん教科書的には正しい行為なのですが、市場の厚みがないので われわれが場味を見て急落を仕掛ければすぐに追随して損ぎりをしてくれます。
われわれに都合が悪いのは売り手がわれわれだけになり、後から売って くれる人がいなくなることです。これは買いの場合でも同じですが、 自分と同じ行動を自分より後にしてくれる人がいなければ利益にはつながりません。
その心配が要らないのですから非常に楽です。
更にJ国では誰でも信用取引ができる為かもがいっぱいいます。更に世界レベルで見てもJ国への資金流入は減っています。
アジアならばC国、またはI国などへ資金は流れています。 付け加えるならば・・
CEO
まだあるのかねA君。
役員A
はい、CEO。
J国の市場を支配しているのは外国人です。
従ってJ国市場を大事にする人はいません。
外国人が自国市場やアメリカ市場を最重要視するのは周知の事実です。
その上現物のシェアの6割を握っているのですから自由に動かせます。
先物にいたっては9割を握っているのですから先物を動かすことは 容易で、いつでも先物から仕掛けられます。
役員B
つまり先物でいつでも揺さぶりをかけられるということですか。
役員C
外国市場が下がれば連動安確実、外国市場堅調でも独自要因で
値下げコントロールができるということですね。
役員A
お二方のおっしゃるとおりです。どうでしょうCEO。
CEO
今年もわが社のターゲットはJ国市場で決まりだ。
今年も儲けさせてもらうとしよう。
かくして今年もJ国市場は空売りファンドに蹂躙されるのである。
「株が大好き」 管理人 : renbajinharuhi さん執筆のメルマガです。
1985年より投資をはじめて投資暦28年。
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